長崎のローカルチェーン『牛右衛門』をぜんぶめぐったよ!〜vol.9 四ヶ町店編~

わが町・長崎県佐世保市にある四ヶ町商店街。佐世保駅から徒歩10分ちょっとの場所に「牛右衛門 四ヶ町店」はある。
結婚して子どもが生まれる前、10年前になるだろうか。ここにはよく、仕事帰りに夫やその友人たちと生ビール(キャンペーンか、ハッピーアワーかでとても安かったのだ)を目当てに訪れていた。アラカルトメニューをつまみ、窓からアーケードを行き交う人々を眺めながら人生賛歌にひたる夜。
そんな記憶と同時に、ここが牛右衛門めぐりの終着点であることも思い出してさびしい。とはいえ四ヶ町店も馴染み深いお店であるから、改めて「良さ」を噛みしめられるということはとても意義があるんじゃなかろうか。
そしてわたしは、“旅の終着点”を大義名分に、ずっと食べたかったあのメニューを堂々といただくのだ。近隣の20分100円パーキングに車を停め、時計を気にしながらつま先立ちでルルルと向かった。

冬にはパーティーする人々を眺めながら食事をするというマトリョーシカ構造が楽しめる
きょうもアーケードを人が歩いている。買い物から通勤、お散歩まで、実にさまざまな年齢層の人たちが直線距離約1km(※三ヶ町を含む)の道のりをせっせと歩いている。とにかく暑さが一年の半分を占めてしまった近年では、こうした屋根付きの歩行者天国ルートは本当にありがたい存在なのだ。

それにしてもこの「牛右衛門 四ヶ町店」の店構えは何度見てもクールだ。一階にはレコードとスポーツ用品の店が入っており、その二階に位置しているのだが、一階の階段横、側面部分もしっかりと販促ディスプレイをしているため存在感は抜群だ。

二階へ引き込むパワーがすごい。「ここにレストランがあります!」の全力アピールに圧倒される。ぐるっと周囲を回ってみよう。
ランチやキャンペーンの情報が力強い。色もバチバチで、目と胃袋が刺激される。

ガラス越しに、四角柱のディスプレイが見えた。料理の写真が貼ってある。階段脇を空白にさせないそのヤル気に脱帽した。

店舗入り口から左側へぐるりと回る。アーケードを見下ろせる客席側だ。ここから見える景色は店・人・床に限られるものの、イベント時にはとても趣深い。冬の恒例イベント「きらきらチャリティ大パーティー」では、長机がずらりと並び数千人がパーティーする。それを食事しつつ真上から眺められるというマトリョーシカ構造が楽しめる穴場である。
「Gyuemon」と書かれた電飾看板が見えた。光るとどんな感じなのかワクワクするね。

ここ、四ヶ町商店街のテナントには特徴があって、ひとつは店舗ごとに商店街のロゴ入り看板がつけられていること。

そしてもうひとつは、それぞれの店舗入り口の床に正方形のパネルが埋め込まれていることだ。これらはお店のジャンルを示している。
昭和57年7月にオープンした牛右衛門 四ヶ町店をはじめ、パネルと店舗が一致している老舗もあれば、「以前は違うお店だったんだ」と分かる、営業年数が若いお店もある。

さぁ、いよいよ階段をのぼっていくぞ。見てくれ、この歓迎ムード。四ヶ町店名物・アーチの門だ!

振り返ると、帰り道のメッセージが書いてある。県境にある両面看板を思い出すなぁ。この階段の雰囲気自体が、窓から見えるカーテンとあいまって西洋風というか、レストラン味を感じられて良いのだ。

ホテルの朝食風景のような、この電飾看板も昔ながらのものだろう。おいしそうな写真パネルと食品サンプルが同居するメニューの棚を眺めていると、懐かしくもあり食へのスイッチが入る。

シニアたちも羽をひろげて
旅の終着点、そこはこれまで何度も訪れた四ヶ町店。店内はいつものようにおしゃべりを楽しむ人でいっぱいだった。年齢層は高め。そう、このお店。というか佐世保のアーケード街は、そんなシニアたちの憩いの場として重要な役割を果たしているのだ。
ここ数年で、頼みの綱であったイオン(地元民は“ジャスコ”と親しんでいた)や佐世保玉屋といった茶飲み場・しゃべり場の閉店が相次ぎ、居場所が徐々になくなっている。そんななかでの牛右衛門は、まさにオアシスといっていいだろう。


ちょっとまだランチのピーク時だったみたいだ。申し訳なさもあるが、わたしのお腹はしっかりと空いている。
店員さんの案内を待っていると、ソファに座っていたおじいちゃんが「100円安くなる券ば、やろうか?」と話しかけてくれた。指がすべってしまうのだろう、べろりと舐めてから券をちぎってくれた。
わたしはこれを今、ここで使い切らなければならない。

旨さが脳天つらぬくテキサスステーキ
そんなわけで頼んだぞ、「テキサスステーキ」!!ずっと気になってはいた。メニューで4ページも割かれたステーキのページ、【厚切りステーキ】のジャンルに鎮座するその存在が。値段が3000円近くするから、ここぞというときに食べようってずっと思っていたの。それが今回、旅の終着という理由で叶うなんて!

分厚い赤身肉!レア状態!ドキドキしながらフォークを指すとこれがまたやわらかくて驚く。一口でいっていいのかなと躊躇してしまうほどにでかい。

2種類のソースそれぞれで味わう。あぁ、これはたまらん、肉の旨みと脂がが脳にきた。表情筋がゆるむ。これを幸せというのだろうか。


減ってほしくない、けれど熱いうちに食べないと肉に申し訳ない。もったいぶりながらも本能のままにパクパクと食べ終えてしまった。しばし、300gの肉があった鉄板をぼーっと見つめる。
「ジューッ!」という音とともに、店員さんがステーキの鉄板を持って厨房から颯爽と現れた。わたしを含め、その場にいた人たちがぴくりと頭をあげ、その方向を見つめていた。まるで犬のように。
ジュージュー鉄板は音がすでに美味い。その場にいる人たちをパブロフの犬にさせてしまう。

ごちそうさまでした。
満腹になったお腹をさすりながら、わたしは「上にもトイレがあるんだぁ」といった顔をして宴会場のある三階へとのぼった。窓からはアーケードの屋根が見える。新しい景色を見せてくれてありがとうね。

牛右衛門の門をくぐった多くの新人シェフの修行場だという四ヶ町店。その理由のひとつに、全店唯一となる宴会場を備えていることがあげられるだろう。


いつかここでイベントをしてみたい。ZINEとかトークイベントとか。もちろんお料理は牛右衛門だ……!
豊かな旅をありがとう
ひょんなことから、県内9店舗をめぐった今回の旅。あちこち訪れるたびに、ぼんやりと感じていた「よさ」はくっきりとした輪郭となった。
万人に受け入れられるものをつくるのは難しい。けれど、老舗の企業努力ってすごいんですね。ブランド力に加えて柔軟な遊び心、そして飽くなき探求心で時代に食らいついている。なぜおいしいか、なぜ接客がいいのか、どういう意図でこの空間をつくっているのか――。あくまでレストランの一例ではあるが、その答えを今回の旅で体感できたことは、これから外食するうえでのひとつの指標となるだろう。
旅に出る前の自分に教えてやりたいが、あの感動とおもしろさをまた味わってほしいので何も教えないことにする。
ほんとうに豊かな旅だった。
牛右衛門を全部めぐったZINEを出します
「佐世保の自由研究」の一環として、noteでコツコツ書き溜めた牛右衛門めぐりの記事をZINEにします。その名も「佐世保の自由研究右衛門」です。強引ですてきでしょう。名付け親は夫です。

クローズな日記のような記録だったにも関わらず、いつの間にか牛右衛門さんにも読んでいただいてて、うれしいお言葉もたくさんいただくことができました。人生何があるか分からないものです。また、note記事がきっかけで、長崎の月刊タウンマガジン「ながさきプレス」の2026年5月号にて特集記事を書かせていただきました。牛右衛門の代表取締役・中村大介さんとレジェンドシェフ・渋谷さん、さらに重役の方々に囲まれて「想定外だ」と震えた振り返りなど、追加記事や画像も収録したいと思っています。
売り上げは、今後の取材費用に充てさせていただきます。これから制作に進んでいきます~!発行は涼しい秋がやってくる前には出せたら良いなと思っています。今後また情報お知らせしていきますので、ぜひともよろしくお願いします。
【店舗情報】
牛右衛門 四ヶ町店
長崎県佐世保市本島町3−5













