牛右衛門|大塔店でひとりステーキ。父譲りの食いしん坊が目を覚ます|長崎ローカルチェーンの希望「牛右衛門」ぜんぶ巡る vol.1

長崎のレストランチェーン『牛右衛門(ぎゅうえもん)』の、お店ごとの雰囲気と料理の味を噛みしめていく記録です。
わたしは昭和生まれ。
平成が終わり、令和になってもやっぱり「良い」と感じる牛右衛門の魅力っていったい何だろう。なぜ県外から来た友人に勧めてしまうんだろう。
メニューの豊富さ? 昔ながらの雰囲気? まぁそれだけでも十分な理由にはなるけれど、まだまだ言語化できていない部分は多いと感じる。
そんなフワッとした「牛右衛門はいいぞ」の解像度をあげたいじゃないか。
きっとそうすれば、長崎の暮らしがもっと豊かになるに違いない(個人的見解です)。
そんな大義名分を掲げ、何かのついでにふらっと牛右衛門に立ち寄ってはおいしいものを食べていきます。
肉と牛右衛門とわたし
長崎県のレストランチェーン『牛右衛門(ぎゅうえもん)』。県民ならきっと、幼い頃から親しんできた老舗のひとつだろう。
経営は牛右衛門株式会社で、レストラン牛右衛門をはじめ、酛藏庄屋(もとくらしょうや)、ブルズキッチン、新業態の牛右衛門cafeを展開中だ。
なにを隠そう、いまわたしはこの記事を書くために公式ホームページを開いて「こんなに系列店があったのか」と驚いている。
40年にわたる企業努力にふるえながら話を進めよう。
レストラン牛右衛門は、長崎県内に9店舗ある(2025年10月時点)。そのなかの第一号店となる大塔店は、実家が近かったこともあり、家族と特別な時間を過ごしたものだ。
いま、さらっと書いたが、第一号店だと知ったのはつい最近。長年付き合ってた友達がすごいやつだった的な衝撃を受けた。
そんな大塔牛右衛門との思い出を振り返ってみる。月に一度ぐらい、父が「今日は特別に牛右衛門に連れてってやっけん。おいはステーキが食いたか」と、半分自分へのご褒美も兼ねて連れて行ってくれた。
生ビールのジョッキを手に機嫌よく顔を真っ赤にして肉をほおばる父と、サラダを頼みがちな母。わたしたち姉妹はメニューに目を輝かせ、ハンバーグにカレーと、父と同じくそれぞれ好きなものをオーダー。ちゃっかり食後のデザートにも狙いを定めていた。
「デザートはどがんすっとね」と父がにやにやしながら尋ね、「えっ!いいの~!?やったー!」とすっとぼけるまでがワンセットだった。
結婚して実家を離れてからは久しく行っていなかったけれど、今回たまたま、仕事で大塔方面に行ったので帰りに立ち寄ってみた。するとおなじみの光景が、変わらず広がっていたのだ。
思い出深い大塔店へ


同じ敷地内には「金の天ぷら(キンテンと略して呼んでいた気がする)」というお店が入っていたが、いつのまにか「酛蔵庄屋」になっていた。
あとから調べてみると、最初に入っていたのは同系列の「ちゃんぽん南蛮船」といういかにも長崎らしいネーミングのお店で、のちに「金の天ぷら」、そして現在に至るようだ。

牛右衛門の入口には、ゴージャスかつ味わい深いウェルカム看板がある。
わたしとしては、「Have a Good time!」の気さくなひとこともうれしいし、料理の写真が、テーブルにセッティングされたものを撮影したものではなく、遠近感を気にせず自由にコラージュされているのがこれまたいい。

あっ、これは、コロナ禍以降あちこちで見かけるようになった24時間自販機だ。筐体のどこかに「ど冷えもん」と書かれた冷凍のやつ。

牛右衛門に置いてあるのを見るのは初めて。冷凍自販機は白い筐体のものが多かった印象だが、ここにあるのは牛右衛門のイメージカラーの赤でばっちりキマっていて、外観に違和感なく溶け込んでいる。
99(ギュウギュウ)ステーキに背徳感をプラスする
入店し「ひとりです」と告げる。ランチのピークは過ぎたようで、ドリンクを片手に談笑しているお客さんで和やかな雰囲気だ。

「お好きな席にどうぞ」と言われたので、床が一段下がった窓側の席をえらんだ。
この一段下がった、というのがポイントで、なんだろう、なんだか特別な感じがしないか? 不思議とこれまで一度も座ったことがない席だったので、そわそわした気分で座ってみる。
慣れ親しんだ店の初めて座る席って、当たり前だけど違う角度から見渡せるのがとても楽しい。特に一番端のボックス席は、壁と窓に面していることもあり、しっかりと食事に集中できる環境だ。

牛右衛門のグランドメニューを手に取る。
表紙は合皮のような手触りで、これぞ昔ながらの洋食屋さんといいたくなる。
一枚一枚が厚くコーティングされたページなのでずっしりと重く、ガストやジョイフルと比べると持ちごたえ十分だ。
このメニューを持ってみるだけでもここに来た甲斐があるというもの。

さて、なにを食べようか。仕事を終えたばかりでわたしのお腹はペコペコだ。やっぱり、ここに来たなら肉が食べたい。いままでのわたしがそうであったように!
気合を入れてまっさきに開いたのは肉のページだ。
“牛右衛門と言えば、ステーキ!”
力みなぎるリード文に「よしきた!」と応える。そして、料理だけでなく、作り手にもフォーカスした、ドラマのある文章に心が躍った。

「全世界からおいしい食材を探しだし……、プロ料理人の育成……」黙読していると、脳内でアナウンサーの声が再生された。
血のしたたるような赤身の写真によだれがジュルリ。わたしが求めているのはこういう肉だ!
というわけで、今日のランチはステーキ。「99(ギュウギュウ)ステーキ」に決めた。語呂がよいのと、わざわざよみがなを振ってくれている律儀さに好感が持てたからだ。

なんでもない日に一人でステーキを注文するなんて、初めての経験だ。父が知ったらきっとうらやましがるだろう。いや、「なんばしよっとね」と呆れられるかもしれないが。
ほどなくして、ジュージューと音を立てながらステーキがやってきた。あぁやっぱりこの音。体の細胞がボワッとふくらむ。あれ、いまわたし、無意識に「きたきた!」って言わなかった……?
やはり、父からの遺伝には勝てない。
ひとくちめは、綺麗な赤身。柔らかく、噛むたびにぎゅっと旨みが出てきて思わず笑う。はぁ……いいのかよこんなの。幸福感のため息。牛肉でしか得られない養分はきっとある。

フライングしてしまったが、今回注文したのはこちらのセットだ。

ご覧になると分かると思うが、今回は、通常の洋食セットとはちょっと違うラインナップ。
実はこれ、プラス料金でつけることができる「ちょいカレー」と「ガーリックライス」なのだ。洋食の雰囲気が一気にジャンクなものに大変身!

ちょい足しカレーは昔ながらの洋食屋で見る「あの容器」に入って登場だ。

“ちょい(足し)”という、わんぱくさを可愛さで包み込んだようなフレーズに遊び心を感じる。
だからこそ、こういうこともしたくなるのだ。

なんという昼下がりの情事。こんなに背徳感があって、心躍ることってないんじゃなかろうか。
スプーンにルーとライス、肉をバランスよく乗せて、思い切りほおばる。
カレーのスパイスと、ガーリックライスの香りと脂、そして肉の旨みがガンガン迫ってくるじゃないか。効く!これは、残暑疲れの体に効く……!!
まぁ落ち着こう。オニオンスープに浮いているパンを口で挟んでふわふわさせよう。

そして、最後は、余ったルーをすべてガーリックライスにオンだ。
……えっ、綺麗なカレーが完成したんですけど。もう一品増えたんですけど。
「ちょい」のレベルを越えまくっているちょいカレーにおののきつつ、すっかりお腹がいっぱいになった。たのしい食事だったな。

けど、やっぱりデザートが恋しい。目に入ったのは季節メニューのミニ葡萄パフェ。

シャリシャリの冷たい葡萄とプルプルのゼリーがわたしの胃袋にやさしく染み込んでいく。
こうして、胃袋はパタンと綺麗に閉じた。はい、食事はおしまい。
洋食の佇まいでジャンクなものを食べる背徳感を味わった、きょうの牛右衛門ランチだった。さて次は、どこのお店に行こうかな。
【店舗情報】
牛右衛門 大塔店
長崎県佐世保市大塔町1851













